対談 / 東京ヴェルディコーチ・青柳雅人さんと考える

「個性を見つめる身体の育成」

トレーニング指導歴11年。卒業後 リーグ横浜マリノス〜徳島ヴォルティスの育成フィジカルコーチ。そして今季から東京ヴェルディのトップチームフィジカルコーチとしてアスリートの身体づくりに携わっている青柳雅人さん。そんな彼と育成期における身体づくりを考える対談をおこないました。

東京ヴェルディ・フィジカルコーチ 青柳雅人さんと対談

柏崎:まず、青柳さんが実践しているトレーニングについて聞かせてください。

青柳:もともとは典型的な筋トレ重視タイプでしたが、現在は「胴体力」をベースにしながら、ひとつのメソッドにこだわらず幅広くいろんな方法の良いところ取りをしています。

「胴体力」というと、サッカー選手が取り組んでいることで有名になりましたが、サッカーのためのトレーニングではなく、身体の可能性を広げましょうという考え方です。

コーチとしては、方法論よりも選手個人を見て指導しています。仮にあるアスリートがそのメソッドで成功したときに、その方法が良かったのか、それとも選手個人の資質が良かったのか判断することは本当に難しいですよね。

有名選手がやっている方法が他の選手にも合うか?それは身体の課題が必ずしも一緒か分からないので、同じトレーニングをしたからといって高い結果に繋がるとは限りません。

選手によって持っている痛みや悩みが違うから、いろんなアプローチがあるべきだと思います。

ひとつのメソッドにこだわると、他の考え方に否定的になってしまいますね。

現状と目的から適切なトレーニングを選ぶことがシンプルだけど大切で、選手自身がどんなプレーのどんな瞬間を良くしたいか?によってやるべき事は変わります。それは走ることかもしれませんし、筋トレなのかもしれません。適切な分析が重要です。

選手個人がイメージするプレーと、チームが期待するプレーの擦り合わせはどうしているのですか?

意見が交錯してしまうと、僕にとっては進めるのが大変難しくなります。監督・トレーニングコーチと選手の意見が全部一致しているのが最良ですね。

ただ、若い選手は「強くなりたいからです。」とか抽象的な理由でトレーニングを選択していたりして、具体的なイメージまで持っていないことが多いので、監督の方向性からニーズを見極めてトレーニングを提案するようにしています。

選手の方から独自のメソッドを持ってくることもたまにありますが、飽くまでも選手個人の課題やプレースタイルに合わせたトレーニングが大切だと思います。

そう考えるとフィジカルコーチって難しいですね。僕は「壊れてるところを治してくれ」と患者さんが来られるので、目的と施術が擦り合わせやすい。

そうですね。なので監督も選手もイメージしやすくなるように「選手が試合の中で何回転倒したか」「何回攻撃のためにスプリントしたか」「何回ダッシュしたか」などのデータを全員分取って、分析して話を進めることもあります。

「技術を伸ばすために論理立ててトレーニングをする」という考え方は、一般的ではないかもしれませんが、今後は変わってくると思います。

いまは時代の流れと共にトレーニングが多様化していますね。しかし大切なのは、個人の現状と目的であり、方法論はそのための手段にすぎないので、メディアがひとつのメソッドにフォーカスして盛り立てていることは問題だと思っています。

昔はマスメディアが主でしたが、最近はソーシャルメディアでも偏った情報が山ほど入ってくる。

特に中高生はまだ自分の意見を持っていないことが多いので、浸透しやすい。「そんなことより、筋トレしっかりやって走ったほうが良い」っていうのは地味だから取り上げられませんね。

探究心は強いけれどパフォーマンスが高くない選手が、自分に合わないトレーニングで周りとの力関係を変えられないと、自分の可能性に疑問を持ってしまうことに繋がります。

監督は戦術でチームを成熟させることが仕事の中心です。フィジカルコーチの仕事は、選手の身体能力を向上させてチームの戦術により貢献できる存在になれるよう、戦略を立てて育成することだと考えています。(おわり)

青柳雅人さん

青柳 雅人(あおやぎ まさと)さん

1981年神奈川県生まれ。大学院卒業後から
Jリーグ横浜マリノス〜徳島ヴォルティスの育成フィジカルコーチ
2017年から東京ヴェルディのトップチームフィジカルコーチとしてJ1昇格戦を戦う。
現在は、パーソナルトレーナーとしてサッカーをはじめ一流プロ選手のトレーニング指導や、サッカーインターハイ優勝の桐光学園や鹿児島実業高校などの強豪校でフィジカル指導も行う。